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東京地方裁判所 平成3年(特わ)1473号〔1〕 判決

本籍

東京都杉並区成田東三丁目一七番地

住居

同都中野区鷺宮一丁目一番五号 パティオ鷺宮一〇二号

会社役員

丸山維彦

昭和一六年九月一二日生

右の者に対する法人税法違反、所得税法違反、覚せい剤取締法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

検察官 立澤正人 出席

主文

被告人を懲役三年八月及び罰金一億円に処する。

未決勾留日数中五〇日を右懲役刑に算入する。

右罰金を完納することができないときは、金四〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

押収してある覚せい剤一瓶(平成三年押第九六八号の3)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  東京都杉並区所在の同和ハウジング株式会社の歩合給外務員としてあるいは個人で不動産取引の仲介業務を行っていた者であるが、

一  土木・建築等の施工及び営繕などを目的とし本店を東京都新宿区北新宿一丁目二三番一九号に置く日本建物株式会社の代表取締役椎名徹と共謀の上、右会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社において購入した不動産の仕入価格を水増計上するとともに、架空の支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が七億二三万三三四三円(別紙1の修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が一一億八三四二万四〇〇〇円であったのにかかわらず、同年五月二八日、同都同区北新宿一丁目一九番三号所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九九九四万八六九四円で、課税土地譲渡利益金額が五億五一四〇万一〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一億五一八三万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成三年押第九六八号の1)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五億三七六一万二三〇〇円と右申告税額との差額三億八五七八万一二〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れ

二  前記不動産取引の仲介業務に関して取引先等から手数料やいわゆるリベート等の所得を得ていたにもかかわらず、自己に対する所得税を免れようと企て、右手数料収入を秘匿、除外するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和六一年分の実際総所得金額が八億一一七九万二七六四円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同六二年三月三日、当時の住所地東京都杉並区成田東三丁目一七番二七号を管轄する同都同区成田東四丁目一五番八号杉並税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が五九六二万五八八四円で、これに対する所得税額が二〇七八万二九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の2)を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額五億四五三九万七五〇〇円と右申告税額との差額五億二四六一万四六〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)を免れ

第二  法定の除外事由がないのに、

一  平成三年七月三日ころ、東京都中央区銀座八丁目三番七号西銀座駐車場地下二階において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン約〇・〇二グラムを含有する水溶液若干量を自己の左腕部に注射し、もって、覚せい剤を使用し

二  同月五日、同都新宿区新宿三丁目三八番一号新宿駅東口駐車場内に駐車した普通乗用自動車内において、覚せい剤である塩酸フェニルメチルアミノプロパン結晶五・二一グラム(前同押号の3。鑑定のため一部費消)を所持し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

判示第一の各事実について

一  被告人の検察官に対する各供述調書(平成三年七月五日付、同月七日付《二通》、同月八日付《二通》、同月九日付《二通》、同一〇日付《二通》、同月一一日付《本文五枚綴りのものを除く三通》、同月一二日付《本文二枚綴りのものを除く二通》、同月一三日付、同月一四日付、同月一六日付《三通》)

一  椎名徹の検察官に対する各供述調書(平成三年七月二日付、同月三日付、同月六日付、同月一五日付)

一  大久保正子(二通)、静間順二、前原宇市、重七海男、山本修三、大谷幸徳、新井徳二、小松達郎(四通)、小田嶋克己、藤原一男、近藤正信、田中守こと金海守、武藤武夫、鈴木君代の検察官に対する各供述調書

判示第一の一の事実について

一  大蔵事務官作成の当期建設原価(材料費)調査書、当期建設原価(支払手数料)調査書、当期建設原価(雑費)調査書、給料調査書、福利厚生費調査書、交際接待費調査書、販売手数料調査書、寄附金調査書、受取利息調査書、交際費超過調査書、みなし犯則損調査書

一  検察事務官作成の当期建設原価(支払手数料)の金額について、当期建設原価(雑費)の金額について、課税土地譲渡利益金額について、控除所得税額の金額についてと題する各捜査報告書

一  検察事務官山田彰三作成の捜査報告書(平成三年一〇月一一日付)

一  登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本(二通)

一  押収してある法人税確定申告書(六二/三期)一袋(平成三年押第九六八号の1)

判示第一の二の事実について

一  大蔵事務官作成の受取手数料調査書(二通)、車両関係費調査書、接待交際費調査書、減価償却費調査書、雑費調査書(二通)、給与収入調査書、給与所得控除額調査書、雑収入調査書、源泉所得税調査書

一  検察事務官作成の受取手数料の金額について、雑収入の金額について、所得控除金額の異動についてと題する各調査書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(昭和六三年五月一一日付)

一  押収してある所得税確定申告書(六一年分)一袋(平成三年押第九六八号の2)

判示第二の事実について

一  被告人の検察官に対する各供述調書(平成三年七月五日付《二枚綴りのもの》、同月一一日付《五枚綴りのもの》、同月一二日付《本文二枚綴りのもの》、同月一八日付《三通》)

一  三澤ひとみの検察官に対する供述調書

一  東京都衛生局薬務部長吉川泉作成の回答書

判示第二の一の事実について

一  警視庁科学捜査研究所第二化学科主事宮田嘉彦作成の鑑定書(東地特捜第三二八号による嘱託に対するもの)

一  検察事務官作成の舩津則幸作成の捜査報告書

判示第二の二の事実について

一  警視庁科学捜査研究所第二化学科主事宮田嘉彦作成の鑑定書(東地特捜第三二七号による嘱託に対するもの)

一  押収してある覚せい剤(瓶入りのもの)一瓶(前同押号の3)

(適用法令)

罰条 第一の一の事実について

法人税法一五九条一項、刑法六〇条、六五条一項(懲役刑選択)

第一の二の事実について

所得税法二三八条一項、二項(懲役刑と罰金刑を併科)

第二の一の事実について

覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九条

第二の二の事実について

覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、一四条一項

併合罪処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条一項

未決算入 刑法二一条

労役場留置 刑法一八条

没収 覚せい剤取締法四一条の六

(求刑 懲役四年及び罰金一億七〇〇〇万円)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 松浦繁)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2 脱税額計算書

〈省略〉

別紙3 修正損益計算書

〈省略〉

別紙4 脱税額計算書

〈省略〉

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